30代男の食卓

作った料理、読んだ本

「冬の犬」 アリステア・マクラウド

クラウドに早くノーベル賞をあげないと、じいさん死んでしまうよ!

と思っていたら、とうとう亡くなってしまいました。寡作の作家。

 

冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)

冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)

 

 

 

(再読)
クラウドの描く人々は、土地に縛られ、連綿と続く血に縛られ、裕福でもなく、決して自由とはいえない。いまどきそんな生活を望む者はいない。

でもそこに生活の手応えがある。生活は自然と手の届く範囲にあり、世代を通じて蓄積されなければ得られないような、生活の知恵や伝説やが息づいて いる(だって、一人の人間が短い生の中で経験し得るものは、限られているのだから)。それが孤独な人の心を暖めている。ひとりの老人が呟くゲール語の一言 には、彼の父の、そのまた父の、一族のヴォイスが重なって響く。

そういう、僕らが手にし得ない貴重な財産に、どうしようもなく惹かれる。